第97章 緊張の時

すると、会場の雰囲気が一気に盛り上がり、歓声と声援が入り混じって、とても賑やかになった。

杉本瑠璃は視界の良い場所を見つけて、腰を下ろした。

鈴木てんいちの足さばきは素早く、身のこなしは軽やかで、拳は目でも付いているかのように、毎回北澤亮太の顔を狙っていた。

まるで北澤亮太の顔を豚の頭のように腫れ上がらせなければ、手を止めないかのようだった。

一方、北澤亮太も負けてはいなかった。彼の足取りの安定感と、攻撃を受けても冷静さを保つ態度から、北澤亮太が簡単に倒せる相手ではないことが分かった。

二人は一方が攻め、もう一方が守りに回り、北澤亮太は一見不利な立場に見えたが、杉本瑠璃が見るところ、彼はただチャンスを待っていた。一撃で相手を倒すチャンスを。

ふふ、この一対一の戦い...なかなか見応えがある。

紅葉学園の生徒たちが見物好きなのも無理はない。確かに素晴らしい試合だ。ついでに他人の技も学べる。いつか自分が使うことになるかもしれない。

次第に、二人は互いに攻撃を仕掛け合うようになり、この戦いは二十分以上続いた。二人とも体力が徐々に消耗し、顔にも傷が付き始めた。深刻ではないが、軽いものでもなかった。

二人とも荒い息を吐きながら、目を見開いていた。本当に怒りを爆発させていたのが分かる。鈴木てんいちは苛立っていた。最初は数発で北澤亮太を倒せると思っていたのに、二十分以上経っても倒せないどころか、自分も傷を負ってしまった。

これだけ多くの人の前で、本当に恥ずかしい思いをした。

どうやら、このわかばちゃんを見くびっていたようだ。確かに実力があるな。

二人はさらに二十分ほど戦い続けたが、最後は互いを倒すことができず、疲労で力尽きてしまった。

全力での攻防を四十分以上も続け、二人とも歯を食いしばって今まで耐えてきたのだから、最後に二人が疲れ果てて倒れても、誰も笑う者はいなかった。

むしろ、鈴木てんいちも北澤亮太も、深く敬服されることとなった。よくやったと。

北澤亮太がここまで持ちこたえたことで、多くの人々は彼を少しずつ受け入れ始めていた。もちろん、これからもさまざまな試練が北澤亮太を待ち受けているが、少なくとも体力と武力の面では、とりあえず合格とみなされた。

北澤亮太が合格したら、次は杉本瑠璃の番だ。