鈴木てんいちは聞こえないふりをして、「わかばちゃん、それはどういう意味?」
杉本瑠璃は足を止め、その場に立ち、微笑みながら鈴木てんいちを見つめた。「新入生とはいえ、教室や職員室は教学棟にあるはずで、この広い芝生の上にはないはずよ。そう思わない?」
杉本瑠璃はすでに鈴木てんいちの心を読み取っており、彼が何をしようとしているのかわかっていた。だからこそ、彼について来ることを恐れなかった。
鈴木てんいちは一瞬驚いたが、すぐに笑みを浮かべ、杉本瑠璃の目を見つめながら、賞賛の色を浮かべた。
「さすがに賢いね。じゃあ、次は私がどこに連れて行こうとしているか当ててみる?」
鈴木てんいちは腕を組み、興味深そうな表情を浮かべた。この新入生の杉本瑠璃は、次々と彼の目を引くような行動をとり、彼女がどれだけの驚きを与えてくれるのか、とても知りたかった。
「どこであろうと、先に行きましょう。柊木先生に用があるので、早く済ませたいわ。行きましょう」
杉本瑠璃はきっぱりと言い切った。鈴木てんいちは、このわかばちゃんという新入生がますます気に入り始めていた。こんな対抗相手に出会うのは久しぶりだった。
なかなかいい、これからの日々が面白くなりそうだ。
鈴木てんいちは杉本瑠璃を連れて歩き続け、機嫌が良かったのか、歩きながら学校の案内までしてくれた。
杉本瑠璃も静かに聞き入り、時々質問を投げかけると、鈴木てんいちも丁寧に答えてくれた。
しばらくすると、鈴木てんいちは杉本瑠璃を体育館に連れて行った。「さあ、君に不満を持っている人がいて、一戦交えたいそうだ」
「紅葉学園は生徒同士の私闘を許可しているの?」
杉本瑠璃は眉を少し上げ、面白そうに言った。
鈴木てんいちも笑いながら、真面目な表情で答えた。「なぜダメなんだ?紅葉学園で生き残れる者は、エリート中のエリートだ。護身術も知らないで、どうやって身を守るんだ?うちの生徒の多くは家柄が良く、誘拐や恐喝なんてことも起こりうる。今のうちに自分を強くしておかないと、誘拐されてから後悔しても遅いだろう?」
「備えあれば憂いなし?そうね、あなたの言う通りよ。誘拐されたら、他人の助けを待つより自分で何とかしないとね」