第101章 顔が殴られやすい

「弟子になるのは無理だけど、護身術くらいなら教えてあげられるわ。一対一で戦うときに怪我しないように」

杉本瑠璃は北澤亮太を指さすと、北澤は即座に言った。「確かに怪我はしたけど、鈴木てんいちのやつも得はしなかったぞ。何発も蹴りを入れてやったからな」

斎藤きくこと桐生誠一は、経済学部の上級生が本当に新入生に手を出すとは思っていなかった。彼らも早く杉本瑠璃から技を学ばないと、ボコボコにされてしまいそうだった。

その時、杉本瑠璃以外の三人が、まるで示し合わせたかのように同時にため息をついた。

紅葉学園の学生は、本当に異常だ!

四人が休憩しながら食事をしていると、安藤颯の姿が見えた。相変わらず数人の女子学生に囲まれており、全員新入生で、一様に元気のない様子だった。おそらく彼女たちも苦しめられたのだろう。

安藤颯は芸術学部の新入生たちのリーダー的存在となっていた。仕方がない、芸術学部は女子が多く、新入生の多くは一般家庭の子供たちで、安藤颯のような恋愛の達人を扱うスキルなどなかった。

遠くから杉本瑠璃たちを見つけると、安藤颯は一瞬目をそらし、女子学生たちを連れて杉本瑠璃から離れた場所へと向かった。

斎藤きくこはそれを見て、冷ややかに「ふん、臆病者」と鼻を鳴らした。

今や多くの新入生は知っていた。杉本瑠璃のような存在は、上級生が対処すべき主要なターゲットだということを。誰も杉本瑠璃と関わりたがらず、巻き込まれるのを避けていた。

杉本瑠璃は読まなくても安藤颯の考えは分かったので、気にしなかった。北澤亮太は事情が分からず、斎藤きくこが知っていることを北澤に説明すると、北澤も安藤颯の方を見て、感心していた。

「本当に見た目は人間なのに、やることは全然人間らしくないな」

斎藤きくこは吹き出しながらも、強く同意して頷いた。杉本瑠璃はしばらく考えた後、最終的に公演のことを仲間たちに話すことにした。

「えっ?まさか、年末の年越し公演に私たちも参加するの?」

斎藤きくこは少し驚き、安藤颯という偽善者と一緒に協力しなければならないと思うと吐き気がした。