午後、朝日執事が服を持ってきて杉本瑠璃に選ばせた。瑠璃は一通り見回したが、あの精巧で華麗な黒いドレスが気に入っていたものの、今の年齢では若すぎて似合わないと思った。
最終的に瑠璃は玄色のドレスを選んだ。そのドレスのデザインは良く、露出が多すぎず、保守的すぎもしなかった。
同時に持ってきたのは、風邪専用の薬剤だった。
「杉本先生、これは私の若様からお預かりしたものです。風邪に大変効果があります」
瑠璃は薬を受け取った。試験管のような小さな瓶で、中には紫色の液体が入っていた。薬というよりは、昨日飲んだジュースのように見えた。
瑠璃は頷いて言った。「三島様によろしくお伝えください」
朝日執事は軽く頷き、瑠璃が飲む様子を見せないので、さらに付け加えた。「若様が申されるには、この薬剤はすぐに服用する必要があるそうです。時間が経つと効果が薄れてしまいます」
瑠璃は手の中の薬剤を見つめ、眉をひそめた。朝日執事は慌てて言った。「杉本先生、お急かしするつもりはございません。ただこの薬剤は入手が困難で、効果が切れてしまうのは惜しいものですから。他にご用がなければ、私は退出させていただきます。どうぞごゆっくりお休みください」
朝日執事が去った後、瑠璃は慎重にこの薬剤を観察した。三島悠羽が害を与えるとは思っていなかったが、この種の薬剤にあまりにも馴染みがあったからだ。
前世で治験モニターをしていた時、よくこのような試薬に触れていた。ただし、それらの試薬には風邪薬ではなく、効果も分からない薬物が入っていた。
だからこの試薬を見た時、瑠璃は完全に固まってしまった。今は誰もいないので、瑠璃はそこに座ったまま呆然としていた。
なるほど、治験モニターをしていた長い間、市場でこのような薬を見かけなかったのは、これらの薬が一般市民向けではなく、おそらく三島悠羽のような大家族の人々だけが使用する資格があったからだろう。
彼女は、これらの外部に流出可能な試薬がどれほど効果的かよく知っていた。最も重要なのは、流出可能な試薬は、数え切れないほどの人々による試験を経て、副作用が全くないことが保証された後に製造されるということだった。
瓶の蓋を開け、瑠璃は試薬を飲み干した。しばらく横になって眠り、起き上がった時には確かに風邪は治っていた。