杉本瑠璃は軽く笑いながら酒を一気に飲み干し、手に杯を持ったまま、なかなか飲もうとしない三島明を見つめた。
三島悠羽はそこに座り、少し顎を上げて、ゆっくりと言った。「明、お前が謝罪の酒を注いだのに、杉本先生はすでに痛快に飲み干したというのに、お前はなかなか飲もうとしない。誠意が足りないようだな。」
年配の者たちが三島明を見ると、彼はまだ杯を握ったまま一口も飲んでいなかった。三島颯真は顔を曇らせた。
「明ちゃん、何をぐずぐずしているんだ?」
三島明には言いたくても言えない事情があった。この杯に「極楽世界」が入っていると言えるはずがない。
いけない、飲むわけにはいかない。どうしよう?
そうだ、酒に虫が入ったと言って、別の杯に替えればいい。
「ふふ、三島明、お前がなかなかこの酒を飲もうとしないのは、もしかしてこの酒に何か問題でもあるのかな?」
三島明が口実を見つけて酒を替えようとした矢先、三島悠羽に先を越されてしまった。三島颯真の表情はさらに暗くなり、三島明を見つめた。「この酒、本当に何か問題があるのか?」
質問のように聞こえたが、その口調には警告が含まれていた。三島明は口をゆがめ、笑みを浮かべる三島悠羽を恨めしげに見つめた。三島悠羽が突然口を挟んでこなければ、適当な理由をつけて酒を替えられたのに、今となっては替えるわけにはいかなくなった。
もし本当に酒を替えたら、三島颯真は必ず彼が何か入れたのではないかと疑うだろう。
「ふふ、そんなはずがありません。さっきちょっと飲みすぎただけです。この酒は杉本先生への謝罪の酒ですから、必ず飲みます。兄さん、冗談を言わないでください。私は兄さんの弟ですよ。どうして酒に薬を入れるようなことをするでしょうか。」
そう言うと、思い切って、薬が入った杯の酒を一気に飲み干した。
最後の一滴を飲み干したとき、三島悠羽がさらりと笑って言った。「酒に薬?三島明、お前は考えすぎだ。私はただ虫が飞び込んだのを見て注意しようと思っただけだよ。お前の想像力は本当に豊かだな。」
三島明は一瞬固まり、顔全体が歪み、真っ青になって、老血を吐きそうになった!
一方、三島悠羽はただ淡々とそこに座り、その何とも言えない態度に、三島明は彼を絞め殺したい衝動に駆られたが、すでに酒を飲んでしまった以上、吐き出すこともできず、諦めるしかなかった。