三島颯真が差し出した手が止まり、その場で固まってしまった。周りの人々も非常に驚き、何か途方もないことを聞いたかのように、杉本瑠璃を奇妙なものを見るような目で見つめていた。
この杉本瑠璃は頭がおかしいのではないか?三島グループの社長の目の前で断るなんて、しかもゴールドカードを断るなんて!
三島颯真は明らかに面子を失ったが、すぐに考え直し、杉本瑠璃が見識がなく、このゴールドカードの価値を知らないから、そんなにあっさりと断ったのだと思った。
「ふふ、杉本先生はこのゴールドカードが意味することをご存知ないようですね。このカードは……」
三島颯真がカードの価値を説明する前に、杉本瑠璃は再び笑顔で丁寧に断った。しかし、今回の断り方は、全員を驚かせることになった。
「結構です。私はブラックカードを持っていますので。」
ドーン!
何?
ブラックカード!
三島颯真でさえ驚きで瞳を見開き、信じられない表情を浮かべた。ブラックカード?三島グループのブラックカード?
杉本瑠璃がどうして三島グループのブラックカードを持っているはずがない!
三島グループのブラックカードは、彼でさえ持っていない。
なぜなら、三島グループのブラックカードは設立以来わずか2枚しかなく、1枚は彼の最初の妻、つまり三島悠羽の亡き母が所持し、もう1枚は三島颯真の父が誰かに贈ったと聞いている。実際、三島グループで言えば、三島颯真の父こそが真の創設者だが、父は早々に地位を彼に譲り、自身は休暇を取って悠々自適な老後を送っている。
「杉本先生、あなたは……三島グループのブラックカードをお持ちだと?三島グループの?」
三島颯真は試すように尋ね、口調は厳しかった。
周りの令嬢たちはこのことについてよく知らず、それぞれ父親や年長者に尋ねた。
「お父様、三島グループにブラックカードがあるんですか?聞いたことないわ。」
「三島グループのブラックカードって何が特別なの?あのゴールドカードより凄いの?」
「この女性は一体誰なの?見てた?三島社長の態度まで変わったわ。」