車が発進し、三島悠羽と杉本瑠璃は後部座席に座り、朝日執事も一緒に助手席に座った。
道中、三島悠羽はとても静かで、杉本瑠璃は少し不思議そうに三島悠羽を見つめ、いつもと様子が違うことに気づいた。
もしかして...怒っているのだろうか?
杉本瑠璃は自然と口を閉ざし、ただ周りの景色を眺めていた。道はどんどん人気のない方へと向かい、杉本瑠璃は眉をひそめた。もし間違っていなければ、この道は飛弾山へ向かうはずだ。
飛弾山はY市で有名な墓地で、杉本瑠璃は軽く横を向いて三島悠羽を見た。
三島悠羽は、彼女が初キスを奪ったことで、証拠隠滅のために連れて行くつもりなのだろうか?
うん、見れば見るほど三島悠羽はそんなことをしそうな人物だ。
杉本瑠璃はそう考え、直接尋ねた。「三島悠羽、私たち墓地に行くの?」
三島悠羽は窓の外を見続け、全身から哀愁の雰囲気を漂わせ、普段の仮面すら見せていなかった。
「ああ、墓地だ」
三島悠羽は多くを語りたくないようで、一言答えただけで再び窓の外を見つめた。三島悠羽の漂わせる哀愁に影響されたのか、杉本瑠璃もそれ以上質問せず、静かに車に座りながら、密かに三島悠羽を観察していた。
横顔だけでも、陽光に包まれた彼は雪のように儚く、冷たい瞳と結んだ唇は、陽の光が差し込んでも、心の中の冷たさを溶かすことはできないようだった。
いつの間にか、杉本瑠璃の視線は三島悠羽の紅い唇に落ちていた。紅花のように赤い唇が、今朝自分の唇と触れ合ったことを思い出し、今の絶世の美しさと淡い哀しみを帯びた雰囲気と相まって、まさに魅惑的だった!
「どうやら僕の容姿が、杉本先生の好みに合うようですね。気づいていないようですが、もう着きましたよ?」
三島悠羽は先ほどの淡い哀しみを引っ込め、再び薄く笑みを浮かべ、魅惑的な黒い瞳を細め、じっと杉本瑠璃を見つめていた。
コホン!
杉本瑠璃は軽く咳払いをし、先ほどの気まずさを隠しながら、周りを見回してから言った。「ええ、三島様の容姿は確かに優れていますが、雰囲気の方がもっと素晴らしいですね!意外ですね、三島様が容姿にそれほど関心があるとは」
「三島悠羽です。杉本先生、また間違えましたね」
あっ...
「言い間違いです。到着したなら、降りましょうか」