第194章 お前は私に体を洗わせたいのか(8)

杉本瑠璃は彼女の言った通りに部屋で休んでいたわけではなく、こっそりと部屋を出てホテルを離れた。

鍼灸術を受けた後、ただ一眠りしただけで何ともなくなった理由は分からなかったが、今は三島悠羽のところに留まるのは複雑な気持ちだった。

どうせ三島悠羽が紅葉学園に休暇の連絡をしてくれたのだから、この数日間はパラダイスの件を片付けることにした。

「蒼、山本竜也の方は既に有罪判決が出たようです。毒物による傷害の容疑で数年の刑を言い渡されました。今、山本家は山本竜也を助け出そうと、あちこちで手を回しているようです。」

日向あきらは山本家の動きを常に注視していた。山本竜也が傭兵を雇った件を知っていたため、数年の懲役刑だけでは少し物足りないと感じていた。

「探させておけばいい。誰も彼を助けようとは思わないでしょう。結局、紅葉学園の人間が山本竜也を処分したのだから。紅葉学園の背後には三島悠羽がいる。山本竜也を救うために三島グループを敵に回すような損な取引は、誰もしたがらないはず。」

山本竜也が数年の刑を言い渡されただけということに関して、杉本瑠璃は物足りなさを感じなかった。なぜなら、真の黒幕は山本竜也や山本颯真といった小物ではなく、三島聡だということを既に知っていたからだ。

それに、傭兵の件を徹底的に追及したくもなかった。今やその傭兵たちは彼女の配下となっており、もし傭兵の件で責任を追及すれば、彼らも巻き込まれることになるからだ。

今の杉本瑠璃の目には、山本家の方々はもはや取るに足らない存在だった。山本家の暴れる日もそう長くはないだろう。

山本宝飾は既に彼女の手に収まり、山本家には他の事業もあるが、これからは一歩一歩、山本家の全ての財産を手中に収めていく。だから、急ぐ必要はなかった。

どうせ山本竜也は確実に刑務所行きが決まったのだから、それだけでも山本家の方々は暫く右往左往することになるだろう。

「でも、山本竜也はあんなに卑劣な人間だから、今回失敗しても、また何かやらかすかもしれません。瑠璃さんの周りに護衛を何人か配置した方がいいんじゃないですか?」日向あきらたちはプロのチンピラではないが、男である以上、杉本瑠璃について行く以上は、彼女の安全を守らなければならない。