「どうしてサントリーニを思いついたの?」杉本瑠璃は少し不思議に思った。
三島悠羽は微笑んで、少し神秘的な様子で答えた。「昨夜、寝ているときに聞いたんだ」
昨夜?
杉本瑠璃は急いで思い出そうとしたが、三島悠羽がそんな質問をした覚えは全くなかった。
「そんなはずない、聞かれてないわ」杉本瑠璃は確信を持って言った。
三島悠羽は目を細め、目尻を少し上げて「聞いたよ。ただ、君が忘れているだけさ。眠っているときに聞いたんだ」
えっ……
眠っているときに聞いた?そんなことあり得る?
そのとき、遠くに立っていた葵が説明を加えた。「ボスは心理学の達人で、催眠術なんてお手の物です」
はっ!
なるほど!
杉本瑠璃は急に挫折感を覚え、いくつかのことは三島悠羽に話しておいた方がいいと思った。
主に、知らないうちに催眠術をかけられたくないということだ!
「あの……これからは何か聞きたいことがあったら、直接聞いてください。これは別に隠すような秘密でもないし、催眠術は、もうやめにしましょう」
三島悠羽はまず目を上げて葵を見た。葵は思わず自分の舌を噛みそうになった。なんで余計なことを言ってしまったんだろう!
それから、三島悠羽は笑顔で杉本瑠璃に向かって言った。「安心して、催眠術なんてかけてないよ。ただ、昨夜君が夢の中でサントリーニという名前を言っただけさ」
はっ!
寝言を言っていたのか。
おそらく昨夜、別荘でディナーを共にしたとき、山頂からの夜景があまりにも美しかったので、サントリーニを思い出したのだろう。
ただ、自分に寝言を言う習慣があることを今まで知らなかった。でも、これまでは一人暮らしだったから、誰も知らなかったのも当然だ。
道のりはまだ遠かったが、ヤマネコがロケットのような速さで飛行機を操縦したにもかかわらず、数時間かかった。
サントリーニに着いたときには、もう夕方近くだった。
そして夕方こそ、サントリーニの美しさが始まる時。杉本瑠璃の意見を聞いた後、二人は伊屋町へ直行した。そこの青と白の家々は、夕日を見るのに最高の場所だった。
三島悠羽は電話一本で、到着時には既に人が待機していた。