第258章 お前らの犬の目を潰してやる!(2)

実は斎藤きくこも杉本家の現状についてよく分かっていませんでした。ただ、杉本家は山本竜也から譲り受けたジュエリーショップがあり、暮らし向きは良いようでした。

ただ、紅葉学園の生徒たちのような裕福な家庭とは違い、一般家庭よりは少し良い程度だと思っていました。

だから、10万元の賞金があると聞いた時、斎藤きくこは杉本瑠璃を誘いたいと思ったのです。

10万元は決して少ない金額ではありません!

「私?私はいいわ。あまり興味ないから」杉本瑠璃はきっぱりと断りました。本当に興味がなかったのです。

斎藤きくこは杉本瑠璃の腕を揺すりながら、甘えるように言いました。「一緒に行きましょうよ。私一人じゃ怖いの。私の付き添いということで、どう?蒼、私、今まで一度もあなたにお願いしたことないでしょう。今回だけ承知してよ」

女の子というのは、多くの場合、何かをする時に仲間が欲しがるものです。トイレに行くときも、買い物に行くときも、そして、コンテストに参加するときも。

杉本瑠璃はそんな斎藤きくこを見て、考え込んでから、ため息をつき、頷きました。「分かったわ。付き添うわ。でも、予め言っておくけど、私はただの付き添いよ。予選で落ちると思うから、その後はあなた一人で頑張ってね」

どうせただのコンテストだし、彼女には順位を争う気もなかったので、斎藤きくこが付き添って欲しいというなら、付き添えばいい。彼女にとって何の損もないし、遊び感覚で参加すればいいのです。

「本当?承知してくれたの?やった!これで一緒に参加できるわね!」

斎藤きくこは本当に嬉しそうでした。杉本瑠璃もその様子を見て気分が良くなりました。こんな些細なことを承諾しただけで、斎藤きくこがこれほど喜んでくれるなんて、素晴らしいことです。

前世での彼女と斎藤きくこの二人の生活を思い出すと、毎日が苦痛と苦悩の中にあり、今の生活と比べると、まさに天と地ほどの違いでした。

こうして、あっさりと杉本瑠璃もオーディション番組への参加を決めたのでした。

今回のオーディションの目的は、ユニバースメディアの新人タレントを発掘することだったので、後世のような生放送やネットでの宣伝は行われませんでした。

テレビでCMを流し、オーディションの内容と応募場所を告知しただけで、それ以外の詳しい説明はありませんでした。