第301章 威風堂々(5)

羽田真央は顔をしかめながら、杉本瑠璃の腕を揺さぶった。「兄さんはあの翡翠を本当に気に入っているみたいなの。兄さんが言うには、あなたがいくらで売るって言っても、絶対に二つ返事で買うって。ご存知の通り、兄さんってすごくケチなのに、そんなことを言うなんて、本当に気に入っているに違いないわ」

羽田真央は羽田和彦のために弁解しようと努めた。「蒼ちゃん、あなた知らないでしょうけど、兄さんはあの翡翠を見てから、帰ってきてからというもの、お茶も飲まないし、ご飯も食べないし、女性にも興味を示さなくなって、ただあなたの翡翠のことばかり考えているの。やっと希望が見えてきたところなのに、見逃したくないのよ。この数日間、羽田家の周年パーティーの準備で忙しくなかったら、とっくに自分で来ていたはずよ」

杉本瑠璃は依然として首を振った。「たとえ彼が直接来ても、私は売るつもりはありません。翡翠の精髄は一つしかなくて、展示に出したのは、以前三島悠羽が買い取ったものです」

羽田真央は驚いて言った。「えっ?本当?これって...三島様が買い取ったものを、あなたに貸してくれて展示させてくれるの?蒼ちゃん、本当に驚いたわ!そういえば、あなたと三島様って一体どういう関係なの?兄さんと三島様は幼なじみなのに、兄さんが翡翠を譲ってくれるよう頼んだ時、まばたきひとつせずに断られたのよ」

羽田真央はずっと、杉本瑠璃と三島悠羽の関係は、ただのかかりつけ医と患者の関係ではないと感じていた。

周知の通り、三島様は女性が大嫌いで、たとえ治療のために杉本瑠璃を側に置くことを渋々認めたとしても、彼のある行動は異常だった。

例えば、三島様が年越しイベントに参加したこと、そして杉本瑠璃のパラダイスのオープニングに来たこと、さらには大勢の目の前で50億円も投じて翡翠のエッセンスを購入したことなど。

また、羽田和彦が何度も三島悠羽に翡翠のエッセンスを見せてもらおうと頼んだのに、全て断られた。しかし杉本瑠璃には貸し出し、パラダイスで毎月一日展示することまで許可している。

この一連の行動は、あまりにも異常で、疑わしかった。

そう、疑わしいのだ。

杉本瑠璃はもちろん羽田真央の心中を読み取っていたが、羽田真央を騙したくないし、かといって三島悠羽との関係を公にしたくもなかったので、何も言わなかった。