第347章 杉本グループ(31)追加分

羽田和彦は相変わらずだらしない様子で、以前と同じような姿だった。真っ赤な服装が、彼をより一層妖艶に見せていた。

目尻が少し細められ、危険な曲線を描いていた。

水瀬英明はもちろん羽田和彦を知っていた。この界隈で、誰が羽田和彦を知らないだろうか!

しかも、ここは羽田和彦のテリトリーだった。

水瀬英明も名家の子息ではあったが、身分や地位で言えば、確実に羽田和彦には及ばなかった。

羽田和彦は帝都四公子の一人だ。水瀬英明はせいぜいY市で少し顔が利く程度で、羽田和彦と比べれば、一段低く見られるのは明らかだった。

それに、羽田和彦は羽田家の唯一の後継者だ。一方、水瀬英明には何人もの兄弟姉妹がいて、長男でもない。家での立場で比べても、羽田和彦には到底及ばなかった。

水瀬英明は最初はちょっと卑劣な態度を取っていたが、今や羽田和彦が入ってきたので、すぐに先ほどの態度を改め、真面目な顔つきになった。

急いで杉本瑠璃に向かって厳しい口調で言った。「羽田様の言葉が聞こえなかったのか?ここは羽田様のテリトリーだ。お前の好き勝手は許されない!物を壊したり人を殴ったり、本当に天の高さを知らないようだな!」

外部の人がいる状況で、水瀬英明は自分のイメージを保たなければならなかった。しかも、水瀬英明は全く考えていなかった、羽田和彦のその言葉が誰に向けられたものなのかを。

水瀬英明から見れば、杉本瑠璃は自分のことさえ知らない、水瀬家のことも知らない人間が、羽田和彦を知るはずがないと思っていた。

だから水瀬英明は当然のように、羽田和彦のこの言葉は杉本瑠璃に向けられたものだと思い込み、この陰鬱な表情も当然杉本瑠璃に向けられたものだと考えていた。

きっと誰かがここで喧嘩があったことを発見し、羽田和彦に報告したのだろう。羽田和彦が来たときには、杉本瑠璃がここの物を投げ壊していて、この個室は杉本瑠璃によってめちゃくちゃにされていた。

ふふ、天も味方してくれているようだ。この時に羽田和彦が現れたことで、あの女は事を収めたいなら、自分に頭を下げるしかないだろう。

水瀬英明は心の中で愉快に考えながら、顔にはますます得意げな表情が浮かび、杉本瑠璃を見て、少しあごを上げた。

杉本瑠璃が羽田和彦の怒りを受けるのを待っていた。