第376章 私は道場破りに来ました！（20）

三島明は思いもよらなかった。ただの遊びのつもりだったのに、この女の子がこんな方法で押しかけてくるなんて。

何より今日は母親のパーティーだ。パーティーで恥をかくわけにはいかない。

「明さん、本当に私のことを捨てるの？一番愛してるって言ってたじゃない？今、私たちには子供がいるのよ、子供が！」

女性は泣きながら訴え続けた。水瀬英明も事態が良くないことを察知していた。今日この女性を連れてきたのは彼だ。もし何か問題が起きれば、彼にも責任がある。

そのため水瀬英明は乱暴な行動を取らざるを得なかった。女性の口を手で塞ぎ、作り笑いを浮かべながら、周りの人々に言った。「申し訳ありません。私の同伴者は少し神経質で、おそらく飲み過ぎて、でたらめを言っているんです。すぐに連れて帰りますので、皆様の気分を害することのないように」

そう言って、水瀬英明は女性を強引に連れ出そうとした。誰も水瀬英明を止めなかった。皆、事情を理解している大人だった。騒ぎを見たい気持ちはあっても、この女性を助ける者は誰もいなかった。

冗談じゃない。この女性を助けることは、三島明に逆らうことであり、三島家の人々に逆らうことだ。それこそ正気の沙汰ではない。

「待って」

誰も止めなかったが、杉本瑠璃は違った。

水瀬英明は杉本瑠璃を見て一瞬戸惑い、本当に足を止めて、女性を強引に連れ出すのを止めた。

三島明は杉本瑠璃が介入してきたのを見て、すぐに怒りが込み上げてきた。この杉本瑠璃は、何かにつけて自分に逆らってくる。

「杉本瑠璃、これはお前の関係することじゃない。余計な口出しをするな！」

水瀬玲奈でさえ杉本瑠璃の立場を認めていないのに、三島明がなおさら認めるはずがない。

まあ...杉本瑠璃も三島明と一家であることを認めてもらおうとは思っていなかった。

正直に言えば、三島明のような人間と一家であることは、自分の名誉を汚すことになりかねないと思っていた。