「忙しすぎると感じるなら、ゆっくり休ませてあげることもできるよ」
三島悠羽は相変わらずいつもの様子で、声の調子も変わらなかった。
「やめて!絶対にやめて!暇になったら私の命が危ないわ。まだこんな早く天国に行きたくないし、少なくともあなたのような病人より長生きしたいわ!」
白衣の医者は三島悠羽の以前の部下たちとは違って、彼に対して恭しく接することはなく、むしろ気楽な態度で、まるで三島悠羽を全く恐れていないようだった。
「へぇ?全身毒だらけの小林様が、たった一つの毒素しか持たない私より長生きできるとでも?」
小林様はニヤリと笑い、三島悠羽の言葉など気にしていないようだった。
「私の体中の毒は確かに毒だけど、それは宝物だよ。あなたのような命取りの毒とは違うんだ!」
三島悠羽は小林様をただ淡々と見つめ、そして言った。「今日呼んだのは、解毒の件ではない」
小林様はそれを聞いて驚いた。というのも、これまで三島悠羽と会うときは、いつも毒素の話をしていたからだ。
以前、三島悠羽が暗殺者に追われ、体力が弱っていた時でさえ、小林様は現れなかった。それは毒素の研究以外のことには関わらないという方針だったからだ。
もちろん、研究室の件は別だが。
三島悠羽の研究室は、すべて小林様が管理していた。
小林様は三島悠羽の書斎の中を見回し、本棚から適当に一冊の本を取り出して、パラパラとめくってから脇に投げ捨てた。
「毒素の件じゃないなら、研究室の件かい?どうかしたの?研究室に何か問題でも?」
三島悠羽は小林様が投げ捨てた本を拾い上げ、本棚まで歩いて行き、元あった場所を探して本を戻した。
もし杉本瑠璃がこれを見たら、きっと驚くだろう。
三島悠羽は潔癖症なのに、全身毒だらけの小林様に対しては、全く潔癖症の症状を見せないのだから。
これは確かに科学的ではない。しかし杉本瑠璃は非科学的なことを数多く見てきた。結局のところ、三島悠羽の潔癖症は、杉本瑠璃から見れば、断続的で選択的なものだった。
「確かに研究室の件だ」
「何の用件?言ってくれ。私は今忙しくてたまらないんだ。最近いくつかの実験で大きな進展があって、戻って見ていないと、あの厄介な連中が台無しにしかねない」
小林様はまた三島悠羽のデスクの上のものをいじり始め、まるで一瞬も静かにしていられないようだった。