杉本瑠璃は考えれば考えるほど心が震え、興奮を必死に抑えて、異常を見せないようにして博士に気づかれないようにした。
この時でさえ心臓が激しく鼓動していたが、杉本瑠璃は冷静を装い続けた。
しばらくして、杉本瑠璃は探るように尋ねた。「へぇ?そんなに素晴らしいものなんですね。では、一つ伺いたいのですが、普通の人を身体能力の優れた人間に変えることは、パンドラ計画で可能なのでしょうか?」
博士は少し考え込んで、杉本瑠璃をじっくりと観察した。
【この杉本先生は一体何者なのだろう?もしかして何か知っているのか?なぜパンドラ計画から派生した計画のことを知っているのだろう?この考えは清水翔太さえも知らないはずだ!杉本瑠璃はどうやってそれを知ったのか?単なる偶然か?】
杉本瑠璃は心が沈んだ。博士の心理活動から、パンドラ計画は理論上、確かに杉本瑠璃の言うような効果を達成できることが分かった。
しかし...少なくとも現時点ではまだ実現されておらず、博士も似たような派生計画を持っているだけだった。
そして、この計画は清水翔太も知らないというのは、少し奇妙だった。
この研究所の所有者は清水翔太なのに、博士の思考から読み取ったところによると、清水翔太がこのことを知らないというのは、明らかにおかしかった。
「博士、一つ伺ってもよろしいでしょうか。いつからここで働いているのですか?」
杉本瑠璃は既に博士の思考から知りたい情報を得ていたので、前の質問に対する博士の回答を聞く必要はもうなかった。
博士も一瞬戸惑い、杉本瑠璃の質問があまりにも唐突で、思考についていけないような様子だった。
「5年前です。5年前に来ました。何か問題でも?」
博士は直接的に答えた。5年前ということは、博士は最初からこの研究所にいたわけではなく、後から来たということだった。
杉本瑠璃は博士を見つめて考え込み、博士も考え始めた。
【なぜ彼女はこんな質問をするのだろう。もしかして私の以前の身分を知っているのか?】
杉本瑠璃の目が一瞬輝いた。以前の身分?この博士には別の身分があったのか?
ふふ、これは面白くなってきた。
「ここに来る前は、どちらで働いていらっしゃったのですか?」
杉本瑠璃は引き続き誘導したが、今回、博士は余計な考えを巡らせなかった。