第456章 Y市の風雲人物(16)

田中毅はそこに立ち、しばらく反応できなかった。ようやく耳に声が届いた。

声の主は、もちろん杉本瑠璃だった。

「そうね、確かに三島邸に戻って様子を見るべきね。ふふ、また誰かが調子に乗っているようね。佐藤執事、あなたはもうここで見張っている必要はないわ。私と一緒に戻りましょう。おじいさまも何が起きているのか聞きたがっているでしょうから」

佐藤執事は頭を下げた。「はい、家督様」

朝日執事がそう言った後、佐藤執事も「若奥様」と呼ぶのをやめ、「家督様」と呼び方を変えた。

この二つの呼び名は、まったく異なる地位を表している。

三島悠羽様の妻という立場も確かに尊いが、三島家の家督という地位は絶対的に超然としたものだ!

田中毅はほぼ確信した。杉本瑠璃は本当に三島家の家督なのだと。