そのとき、島田凜は白川華怜の服の端を軽く引っ張り、目配せをした。
山田は女子からの物を一切受け取らない人だった。
なのに今は差し出された朝食を受け取り、「ありがとう、ありがとう。田中美依、もう授業が始まるから先に行って」と言った。
田中美依の渋面が再び笑顔に変わり、「じゃあ、夜にバスケの試合を見に行くね」と言った。
今日は機嫌がいいのか、田中美依は鼻歌を歌いながら1年5組から出て行った。
彼女が通り過ぎる場所では、男女問わず思わず首を縮めた。
「転校生、あなたは新しく来たばかりだから説明してあげるわ」前の席の女子が振り返り、ほっと息をついて白川華怜に言った。「さっきの子は2年生の田中美依よ。でもそう言っても分からないわよね。うちの学校のイケメン、山田のバカ以外にも田中駆って人がいるの。田中美依は田中駆の妹で、田中駆は3年8組、特進クラスなの。分かる?彼女といつも一緒にいるのは、田中駆や中村優香みたいな人たちよ」