027 反骨の身、江渡予備校

秘書長は中村綾香より多く来ていたが、今回中村綾香は特別に彼を連れてきた。

彼は最初、白川華怜から本を受け取るのは一言で済むことだと思っていた。

その本の価値をはるかに超える金額を提示したことはさておき、中村家の名声だけでも、なぜ白川華怜がほとんど考えもせずに断ったのか理解できなかった。

「もちろん、私は絶対に根に持つタイプよ。あなたが今ここで呼吸できているのは」白川華怜は足を止め、イヤホンを投げ上げながら彼を横目で見て、「私の我慢の限界なの。だから、お爺さんの前では上手く演技した方がいいわよ」

秘書長は上には媚び、下には高圧的な態度を取るのが常だった。中村修の重視があってこそ、安藤家に目を向けていたのだ。

しかし、彼が眼中になかった白川華怜が全く面子を立ててくれないとは思いもよらなかった。

この時、彼の口元の笑みが凍りついた。

居間で、安藤宗次は老眼鏡をかけていた。

左手に刺繍枠を持ち、右手の親指と人差し指の間に新しい煙管を挟んでいた。

白川華怜はそれが、前回安藤秀秋が彼女と北区へ行った時に、デパートで特別に選んだ煙管だと分かった。

安藤宗次は刺繍枠を持つ手で老眼鏡を押し上げ、中庭の人々を見て、「華怜が帰ってきたのか?私が刺繍した模様を見てごらん」

彼は皆の雰囲気が少しおかしいことに気付いていたが、何も言わなかった。

ただ軽やかに白川華怜に言った。

「お爺さん」白川華怜は部屋に戻らず、カバンを中庭の石のテーブルに置き、安藤宗次の肩を抱きながら、「今日もまだ刺繍を…」

彼は一服吸い、薄い煙が漂った。

秘書長は粗悪なタバコの匂いを嗅ぎ、気付かれないように眉をしかめた。

煙越しに、白川華怜は少し首を傾げ、煙の中で秘書長に向かって挑発的に笑い、無言で口を開いた——

【事を起こさないで】

秘書長は目の中の冷たさを隠し、再び顔を上げて中村綾香を見る時には、非常に困惑した様子で、「中村社長、ご覧になってください…」

陽城市のどの人間が中村家に出会っても避けて通るというのに?

最近勢いのある田中家でさえ、彼にこんな横柄な態度は取らない。

「あら中村社長」水島亜美は慌てて口を開き、中村綾香が怒りを向けることを恐れて、「華怜はまだ子供っぽいところがありますから、気にしないでください。その本のことは、私が夜にまた彼女と話してみます…」