局長は以前の付き合いがあったからこそ、中田お婆さんにそう言えたのだ。
冗談ではないことが伝わってきた。
田中湊の名前まで出してきたのだから。
中田お婆さんは孫を下ろし、急に立ち上がった。声はまだ少しかすれていた。「本気なの?」
彼女だって察する力はある。今日の午後のあの女の子たちときたら、頭からつま先まで、彼女が気に入るものなど一つもなかった。
局長の方は説明せずに電話を切った。彼自身も頭を抱えていた。
「おばあちゃん、パスワード...」
中田お婆さんも少し慌てていた。孫のことは構わずに、田中湊に電話をかけた。
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黒水通り。
明石真治からの電話を受けた田中局長は手元の仕事を中断し、激怒した。「いや、陽城市のやつらはどうなってるんだ?誰の頭上で暴れてるかは置いといて、今じゃこんなレベルまで庇い合ってるのか?」