044大異変!安藤蘭(1)

局長は以前の付き合いがあったからこそ、中田お婆さんにそう言えたのだ。

冗談ではないことが伝わってきた。

田中湊の名前まで出してきたのだから。

中田お婆さんは孫を下ろし、急に立ち上がった。声はまだ少しかすれていた。「本気なの?」

彼女だって察する力はある。今日の午後のあの女の子たちときたら、頭からつま先まで、彼女が気に入るものなど一つもなかった。

局長の方は説明せずに電話を切った。彼自身も頭を抱えていた。

「おばあちゃん、パスワード...」

中田お婆さんも少し慌てていた。孫のことは構わずに、田中湊に電話をかけた。

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黒水通り。

明石真治からの電話を受けた田中局長は手元の仕事を中断し、激怒した。「いや、陽城市のやつらはどうなってるんだ?誰の頭上で暴れてるかは置いといて、今じゃこんなレベルまで庇い合ってるのか?」

「天高く天皇遠し、山に虎なければ猿が王となる」部下は仕方なく言った。

このような事態は珍しくない。

彼は二つの例えを続けて説明した。

「木村坊ちゃまの身分が機密状態なのは分かるが、若坊の腕時計は木村坊ちゃまが直々に作ったもので、木村家の印まであるのに、それも分からないのか?」田中局長は車のドアを激しく閉め、眉間に怒りを露わにした。「あの腕時計は、江渡でも木村坊ちゃまにしか作れないものだぞ。彼らの目は節穴か!」

田中局長がこれほど怒っているのは、彼らが木村浩を怒らせただけではない。

むしろ、上から下まで蔓延る腐敗に対する怒りだった。

彼がここに左遷されてきた時、すべては平穏で、黒水通りですら大きな問題は起きていなかった。

田中局長は、自分の主な任務は黒水通りの管理と、田中家、木村家のための人脈作りだけで、安泰に昇進を待てばいいと思っていた。

しかし、すべての平穏は表面的なものだった。

陽城市が彼に見せるための演技だった。

おそらく、彼らが来る前から、陽城市はこの表面的な取り繕いを始めていたのだろう。

今日の出来事がなければ、陽城市全体が表面的な平穏さの下に千々に乱れていることに気付かなかっただろう。