043 説明が悪ければ、田中長邦を江渡に追い返せ(2)

木村浩は誰も見ずに、少し顔を上げて入り口の看板を見た。

そして大股で警察署へ向かった。

コートが冷たい弧を描いて揺れた。

「坊ちゃま」明石真治は急いで後を追った。

入り口の署長たちは完全に無視され、お互いの顔を見合わせた。これは恐らく初めて署長を無視する人物だった。「署長?」

誰かが静かに声を上げた。

あの二人は署長を知らないのか、それとも相手にする気がないのか?

まだ確信は持てないが、彼らは後者だと薄々感じていた。

署長は突然不安になり、一言も言わずに後を追った。

警察署の外で。

吾郎は頭を掻きながら、後部座席の伊藤満を見た。「伊藤さん、私たちもまだ中に入りますか?」

伊藤満は車のドアを開けた。「もちろんだ。姉さんがまだ中にいるんだ。こいつらに一発お見舞いしないと、伊藤坊ちゃまの力を知らないままだな」

ハンドルに手を置いていたななは額を押さえながら、ため息をついた。「伊藤さん、吾郎、二人とも待って」

「なな、お前は今の立場を忘れたのか?姉さんがいなければ、俺たち三人はまだ清水通りでチンピラやってたんだぞ」伊藤満は大声で怒鳴った。

姉さんがサソリを一人で倒してくれなければ、養父に目をかけてもらえず、黒水通りで活躍することもできなかった。

それに……

もし遅れて、姉さんが先にあいつらをやっつけたら、俺の面子はどうなる。

なな:「……」

我慢しろ、兄貴はバカだ。

「もう少し待とう」ななは深く息を吸い、伊藤満を落ち着かせようとした。「さっき入っていった二人はただものじゃない」

ななは何とか伊藤満を説得した。

伊藤満は警察署の向かいにしゃがみ込み、タバコを一本咥えながら文句を言った。「わかった、じゃあ30分待つ」

吾郎も彼と一緒にしゃがみ込んだ。

ななは目をそらし、この二人の間抜けな様子を見ないようにした。

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木村浩がロビーに入ると、忙しく働いていた人々は皆静かになった。

彼は周りを一瞥した。

明石真治はすぐに一人の警官の襟首を掴んで尋ねた。「ここに姉弟は来ていますか?」

警官は明石真治の鋭い目に驚いて、「は、はい」と答えた。

「案内してくれ」明石真治は手を放した。

今日は事件が少なく、ほとんどが未解決の古い事件だった。姉弟といえば、白川華怜と木村翼の二人だけで、今も取調室にいた。