島田凜は頷き、漆黒の瞳に波風はなかった。
お年寄りはため息をつき、手に持っていた饅頭を島田凜に差し出した。「今日はあまり飲んでないみたいだけど…はぁ…あなたが大きくなればいいのに」
島田凜は首を振り、饅頭を受け取らなかった。
言葉も発さなかった。
ただ家の鍵を取り出し、静かにドアを開けようとした。
その言葉にはもう麻痺していた。いつまで大きくなればいいのだろう?
五歳の時から、大人になることを待ち望んでいた。
今はもう十八歳。大人と言えるのだろうか?
彼女にはわからなかった。
ドアを開けると、テレビの大きな音が聞こえ、狭い居間は煙が立ち込めていた。
何日も風呂に入っていない中年の男が、ソファに座っていた。テーブルの上にはフライドチキンと空き缶が数本、古びたソファの横には鶏の骨が散らばっていた。
きっと賭け事で勝ったのだろう。
男は島田凜を一瞥すると、すぐにふらつきながら立ち上がった。長めの髪の毛は固まっており、もごもごと小銭を取り出しながら言った。「リンちゃん、ごめんな。この前パパ、酔っ払っちゃって…お、お前、ご飯食べたか…」
島田凜は無視した。
自分の部屋の鍵が壊されているのを見つけるまでは。
彼女は一瞬固まり、それから急いで部屋に駆け込んでドアを開けた。部屋は荒らされていた。
「バン!」
彼女は力いっぱいドアを閉め、内側から鍵をかけた。
ベッドの下から鍵のかかった鉄の箱を取り出した。
鍵は無事だった。
彼女は安堵のため息をつき、床に崩れ落ちて、激しく息を切らした。
しばらくしてから、やっとカバンの隠しポケットから今日もらった給料を取り出し、きちんと鉄の箱に入れた。
それから、ゆっくりと部屋を片付け始め、艶やかなユリの花を取り出してプラスチックの瓶に入れ、窓際に飾った。
島田凜はベッドに座り、静かにそのユリの花を見つめた。
やや開いた花びらは雪のように純白で優雅で、部屋で唯一の明るい色だった。
しばらく眺めた後、ゆっくりとカバンから緑色の軟膏を取り出し、腕や脚、腹部の傷に塗り始めた。
茶色い軟膏が青あざの上でゆっくりと溶けていく。
かすかに痛みが走る。
**
その頃。
一台の車がゆっくりと陽城市に入っていった。
安藤蘭は無表情で変わらない街並みを眺め、興味を失っていた。