065華怜：バカ、勝手にやってろ（2）_3

瞳は漆黒で冷たく沈んでいた。

何度も修復されたはずだが、それでも門が尖塔の形をしているのが分かり、一目見ただけで門の中の假山や、周囲を取り巻く回廊が見えた。

彼女は知っていた。回廊の向こうには議事堂があることを。

沙盤がまだあるかどうかは分からない。

今では、門廊と回廊には鮮やかな赤い絹布が掛けられていた。

正門には爆竹と花火が二列に並べられ、行き交うスタッフたちは喜びに満ちていた。

裾を軽く引っ張られた。

白川華怜が下を向くと、木村翼が彼女を見上げていた。

白川華怜は手を伸ばして彼の頭を撫でた。

「白川さん」明石真治は車のキーを持ち、恭しく声をかけた。「外でお待ちしております。坊ちゃまをよろしくお願いします」

白川華怜は木村翼の手を引いて中に入り、回廊を渡ると、すぐに左側の受付が目に入った。

長いテーブルが並べられ、茶色のテーブルクロスが掛けられており、受付の女性は優しく完璧な笑顔で「こんにちは、ご来賓の方、こちらで受付をお願いします」と言った。

彼女は優しく受付名簿を取り出し、白川華怜にペンを渡した。

サインを求めた。

白川華怜は早めに到着していた。長い受付名簿を見ると、まだ誰もサインしておらず、来賓も誰も来ていなかった。

上から下まで目を通した。

しかし自分の名前は見つからなかった。

「申し訳ございません」受付の女性は驚いて、急いで名簿を受け取った。「どちらの来賓様でしょうか？お探しいたしますが」

「結構です。ここにはないので」白川華怜は一目見ただけで自分の名前がないことが分かった。「確認してみます」

彼女は携帯を取り出し、加藤正則に問い合わせようとした。

「どうしたんだ？」正門から、中村修の秘書長が中年の男性と笑いながら入ってきた。

遠くからこの状況を見ていた。

「谷部部長」受付の女性が口を開いた。「このお客様のお名前が見つからないので、確認しているところです」

谷部部長は白川華怜を見て、すぐにこの人物が誰なのか悟った。

思わず秘書長の方を向いた。

秘書長の目が白川華怜に触れると、笑みが一瞬で消えた。

彼は敷居の上に立ち、白川華怜を見つめた。「白川さん、あなたは梁体字を習得していると聞きました。陽城書道協会への入会はあなたにとって重要なはずですね？」