070謎の外科医の神様!華怜の本性

白川華怜が病院に着いたのは、もう十時過ぎだった。

彼女は制服を着替えて、白い部屋着を着ていた。無表情で誰も見ずに、看護師について採血に向かった。

看護師が慎重に針を彼女の腕に刺すと、暗赤色の血が透明なチューブを上っていった。

半分ほど採血したところで、看護師が針を抜こうとした。

白川華怜は腕をテーブルに置いたまま、かすかに青みがかった血管が見えていた。ずっと伏せていた目を少し上げ、その瞳は深く冷たかった。そこで初めて言葉を発した。「続けて」

一言一言が氷のように冷たく砕けた。

看護師はこれ以上採血を続けると献血者の体に悪影響が出ることを知っていたが、白川華怜の眼差しに驚き、おびえながらさらに二本採血した。

最後に勇気を振り絞って「もう採血はできません」と言った。

「はい、ありがとう」白川華怜は袖を下ろし、立ち上がった。

電話が急だったので、白川華怜は安藤宗次に告げずに一人で来ていた。

外では、安藤秀秋が断続的に渡辺泉に何かを話していたが、白川華怜が出てくるのを見て、二人とも思わず会話を止めた。

「おばさんはどうなの?」白川華怜は安藤秀秋の前に立ち、救急室の方を見つめた。

安藤秀秋は膝に顔を埋めたまま黙っていたが、渡辺泉が代わりに説明した。「おばさんが階段から落ちてしまって……」

「階段?」白川華怜は頷いた。

渡辺泉は「うん」と答えた。

白川華怜はそれ以上何も聞かなかった。信じたのかどうかも分からない。

「水島亜美さんのご家族の方はいらっしゃいますか?」救急室から、看護師が書類を持って出てきた。「病院に連絡は取れましたか?患者さんは早急に開頭手術が必要です。そうしないと植物状態になる危険性があります……」

安藤秀秋が急に立ち上がった。

渡辺泉は急いで振り返り、助手を急かした。「少爺に連絡は?」

助手は携帯を持って戻ってきて、渡辺泉の催促に困った様子で答えた。「少爺も手を尽くしていますが、院長にはそう簡単には会えないようで……」

「じゃあどうすればいいの?」安藤蘭は少し慌てた様子だった。

白川華怜は植物状態の意味を理解すると、その場の誰よりも冷静に顔を上げた。「診断書を見せてください」

看護師は一瞬戸惑った。

反射的に診断書を白川華怜に渡した。