066申請者の名前を簡単に消してしまう!_3

相手は返信しなかった。

午後九時二十分。

加藤正則はついに我慢できなくなり、携帯を取り出して白川華怜に電話をかけた。

**

図書館。

木村浩が到着した時、木村翼が一人で席に座って、むっつりと本をめくっていた。

彼はゆっくりと手を伸ばし、木村翼の机を軽くノックした。

木村翼は顔を上げ、無表情に近い表情で言った:「トイレ。」

木村浩は手を引っ込め、人を見る時はいつも何気ない冷たさがあった。

白川華怜はトイレに行く時、携帯を机の上に置いていった。その携帯が光った。

木村浩は一目で加藤先生からの電話だと分かった。陽城書道協会の件は彼が手配したものだ。加藤正則が誰なのか、木村浩は知っていた。

白川華怜は今日参加するはずだった書道協会に行かなかった……

木村浩は電話をちらりと見て、すぐに切った。

「どうしてここに?」白川華怜は手を洗い終わり、ペーパータオルでゆっくりと指を拭きながら、声を落として言った。

木村浩は何も言わず、冷ややかな目で木村翼を見た。

木村翼は怒りながら彼のために席を空けた。

木村浩は座り、片手を机に軽く置き、さらりと言った:「研究所の連中に怒らされてな。」

陽城市の山の麓。

CRFS暗黒物質研究所。

山田文雄は粒子衝突を観察し、機械を使って特殊原子の崩壊生成物を探していた時、突然くしゃみをした。彼は呟いた:「まさか誰かが私のことを考えているのかな……」

**

LINEの返信もなく、電話も出ない。

加藤正則は眉をひそめた。

九時二十五分。

谷部部長は加藤正則を急かす勇気がなく、思わず中村修に助けを求めるように目を向けた。

中村修は二歩前に出て、笑いながら言った:「加藤先生、中で待ちましょう。吉時が近づいています。」

「ああ。」加藤正則は携帯を持ったまま、眉間の皺は解けなかった。

敷居を越えると、受付の女性が署名簿を持って、加藤正則と文化観光局長に差し出した。

「谷部部長、これからも書道協会をよろしくお願いします。」中村修は谷部部長に笑顔で言った。

陽城書道協会は、北区と江渡を繋ぐ架け橋だった。

谷部部長は中村家に取り入りたがり、中村修も谷部部長と良好な関係を築きたがっていた。互いに利益があった。