「それで、草刈さん——」
遠山貴雲は冷笑した。「まさか、この動画は警察が削除したとでも言うつもりですか?」
「ざわ——」
これを草刈会長はどう説明すればいいのか?
警察が削除したと誹謗中傷するのか?
法廷でそんなことを言う勇気があるのか?
法廷は再び大きな騒動に包まれた。
草刈会長は奇妙な窮地に陥った。彼らの側の全員の論理的思考が遠山貴雲によってしっかりと掌握されていた。
鈴村景塚も含めて。
遠山貴雲の論理にはどんな隙も見つけられなかった。
「バン——」
裁判官は小槌を打ち下ろした。「静粛に、静粛に」
法廷内の話し声が徐々に収まっていった。
鉄格子の向こうに座っていた山田も我に返った。事件発生日から今まで、彼はずっと緊張状態にあった。
彼は人生の前半をただ漫然と過ごし、最大の夢はエキストラになることだけだった。
今、彼のため、そして他の19人の被害者のために弁護する遠山貴雲を見つめながら、山田はようやくあの日、最後に遠山貴雲が彼に言った言葉の意味を少し理解し始めた。
盛大な開幕を迎えた裁判はここまでだった。
遠山貴雲が提供した証拠は包括的で有効、そして鋭利だった。
裁判団が証拠を検討した結果、午後3時27分に判決が下された——
懲役1年の判決。
殺人の動機は故意殺人罪の成立には影響しないが、量刑に大きな影響を与える。これは恐らく全国で初めての、故意殺人事件で最も軽い量刑となった事件だろう。
さらに、相手側の証人、弁護士……
全員が保釈処分!
これは法曹界全体でも相当衝撃的な出来事だった。
裁判官が判決文を読み終えると、山田側の全員がほっと胸をなでおろした。
宮山小町と森園雄は目を合わせ、二人の目には狂おしいほどの光が輝いていた——
【紅丸法律事務所の無敗將軍鈴村景塚が遠山律夫に上訴されたの?】
【草刈会長も上訴された?さらに警察誹謗の疑いまで?】
【相手は鈴村景塚の師匠だったの?】
【……】
白鳥春姫と山田のお母さんは手を固く握り合い、隣の順子さんはまだ我に返れないでいた。彼女は山田が15年の判決を受けるのが最善の結果だと思っていた。
まさか最後は15年でもなく、10年でもなく、7年でもなく……
3年すらもなかった!
このコック帽を被った弁護士は、一体どこから現れたのだろう?