この時、肩には店長からもらったタオルを掛けていて、とても庶民的な様子だった。
田中恭介は一目見ただけで視線を外し、白川華怜に話しかけることはなかった。
もしこれが吉田様だったら、きっと挨拶に行くだろうが、白川華怜に関してはその必要はなかった。
田中局長は彼を一瞥して、「先に行け」と言った。
「はい」田中恭介も断らず、「吉田様が今日格闘場に白川さんのサイン写真があるって言ってたから、先に行ってきます」
「サイン写真?」田中局長は驚いた。彼も明石真治もそんな情報は聞いていなかった。
田中恭介は田中局長を見て、「吉田様の情報は常に正確です。間違いないはずです」
そう言って、彼は携帯を取り出し、大股で歩き出した。
白川華怜の傍らで、汗を拭っていた伊藤満は「白川さん」という言葉に特に敏感に反応した。