白川華怜は少し疑わしげだった。
彼女は首を傾げ、大きな瞳で彼を見つめた。
「入りなさい」木村浩は路地の入り口で立ち止まり、前方の中庭を見ながら、右手を少し上げた。まるで誓いを立てるかのように。「本当に怒らないから」
白川華怜はようやく視線を戻した。
信じたという表情だった。
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夜の11時。
白川華怜は黒い服に着替え、宿題を持って外出した。
黒水通りの青龍バーへ。
中は光が点滅し、煙が立ち込め、最も賑わう時間帯だった。
白川華怜はベッドで泣きじゃくる伊藤満を見終わると、落ち着いてカウンターに戻り、ハイチェアに座った。片手で無造作に問題集を開き、もう片手でぼんやりとカウンターを叩いた。
ななはデスクライトを取り出し、コンセントを差して点灯させ、誰かにアルコール度数が最も低い飲み物を作らせた。
騒がしいバーの中に、奇妙な一角が出現した——
ゆるく髪を束ねた女の子が、バーには似つかわしくないデスクライトの下で宿題をしている。
「大内補強軟膏の生産量が低いのは」ななは白川華怜に説明した。「価格が高いからじゃないんです。私たちは通常価格で売っています。今は原材料が追いついていないんです。漢方薬を栽培する人が少なくて。でも今回、私たちが漢方薬を大量購入するという情報が広まれば、多くの薬草農家が再び栽培を始めるはずです」
今は漢方薬を栽培する人が少ない。
ななは回収した資金の一部を使って、陽城市の古参農家たちと契約金を交わした。
彼は頭が良く、この件をうまく処理した。
芸術的な才能もあり、商売も上手い。伊藤満の義理の父親も伊藤満は運が良いと言い、ななを自分の配下に引き抜いて重要な仕事をさせたがっていた。今日の昼間も、彼がななを連れて外に出て世間を見せていた。
しかし——
ななはボスについて行きたがらなかった。
隣で、吾郎は腕をさすりながら、シューッと息を吸った。「伊藤坊ちゃまを見てるだけで痛くなります。すごく強いんですよ!」
吾郎は痛覚が敏感で、以前は体が弱かったために孤児院の門前に捨てられた。
孤児院の子供たちは誰も彼のことを好きではなかった。
伊藤満だけが彼を受け入れてくれた。
今では毎日泣きながら訓練している。