白川華怜は少し疑わしげだった。
彼女は首を傾げ、大きな瞳で彼を見つめた。
「入りなさい」木村浩は路地の入り口で立ち止まり、前方の中庭を見ながら、右手を少し上げた。まるで誓いを立てるかのように。「本当に怒らないから」
白川華怜はようやく視線を戻した。
信じたという表情だった。
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夜の11時。
白川華怜は黒い服に着替え、宿題を持って外出した。
黒水通りの青龍バーへ。
中は光が点滅し、煙が立ち込め、最も賑わう時間帯だった。
白川華怜はベッドで泣きじゃくる伊藤満を見終わると、落ち着いてカウンターに戻り、ハイチェアに座った。片手で無造作に問題集を開き、もう片手でぼんやりとカウンターを叩いた。
ななはデスクライトを取り出し、コンセントを差して点灯させ、誰かにアルコール度数が最も低い飲み物を作らせた。