二人は学校の近くで適当な食堂を見つけた。
食事の時間はとうに過ぎており、店内には客がほとんどいなかった。
二人が入店すると、店主は顔を上げて笑顔を見せ、「何にしますか」と聞こうとしたが、ある人物の冷たい視線で遮られ、店主は紙を取り出して、二人が座るテーブルと椅子を丁寧に拭き始めた。
そしてメニューを差し出した。
木村浩は木村翼とは違い、どこで何を食べるかなどどうでもよかった。実験室で連続作業をしているときは、パンだけで過ごすこともあったのだから。
メニューを見下ろし、適当に三品を選んだ。
彼には好き嫌いも特別な好みもなく、選んだのは全て白川華怜の好みの味付けだった。木村浩にとって、飲食や娯楽に時間を費やすのは無駄だと思っていたが、他人の好みを覚えるのは今回が初めてだった。