110本当にやってしまった_2

彼女は本を閉じ、片手でペンのキャップをはめた。

「誰かがデータを間違えて入力したんだ」木村浩は冷たい表情で、彼女に愚痴をこぼすように言った。

そうでなければ、もっと早く帰れたのに。

白川華怜は本をカバンに戻し、顔を上げて、少し考えてから「その人を許してあげたら?」と言った。

「ああ」木村浩は渋々と答えた。

木村浩が戻ってきて、お手伝いさんがもう一度食事を運んできた。木村翼と明石真治、田中局長たちは先に食事を済ませており、木村浩は一人で食事をすることになった。

田中局長は木村浩を見て、ふと思いついたように「白川さん、お腹すいていませんか?」と聞いた。

「大丈夫です。さっきケーキを2切れ食べましたから」白川華怜は立ち上がり、「でも、そろそろ帰らないと。今日はおじいちゃんが私と一緒に食事をするって待ってるので」

宮山小町も緊張した様子で立ち上がり、木村浩にお礼を言った。

明石真治が車のキーを持って立ち上がろうとしたが、田中局長が素早く押さえつけた。心の中で無表情に考えた——

明石さん、正気を失ったか。

木村浩は冷たい雰囲気を纏ったまま、キーを持って先に出て行った。

彼が再び戻ってきた時、明石真治はようやく今日の出来事を木村浩に報告した。

木村浩は目を伏せ、何気なく青菜を一本摘まみながら、ゆっくりと口を開いた。「ここは誰でも入れる場所になったのか?」

彼は明石真治と田中局長を見なかった。

しかし二人は全く顔を上げる勇気がなかった。

木村浩が食事を終えて二階に上がった後、田中局長は明石真治に向かって「じゃあ、これからどうやって東区武術クラブに入るつもりだ?」と尋ねた。

明石真治は元々吉田瑞希に推薦枠を頼もうと考えていた。

「来年もう一度募集があります」明石真治は眉をひそめた。

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白川華怜は少し遅く帰宅した。ランスと安藤宗次の二人の老人もまだ休んでいなかった。

安藤宗次はランスの部屋の片付けをしていた。それは以前安藤秀秋が住んでいた部屋だった。

「おじいちゃん、クラスメイトがあなたの動画を撮りたいって」白川華怜はランスに鍼をしながら、安藤宗次に話しかけた。「刺繍の動画を撮るんだけど、そんなに時間はかからないと思う。撮ってみる?」

ランスは椅子に座ったまま、何か言いたそうだったが、言えなかった。