白川華怜は自分の目標を決して隠さなかった。
彼女は校長が去るのを見送った。
その言葉を聞いて、さらりとした口調で答えた。「江渡大学よ」
「江渡大学か」渡辺助手は頷きながら、渡辺文寺に返信しようと携帯を操作していたが、途中で気づいた。「江渡大学?」
彼は呆然と顔を上げた。
「どうかした?」白川華怜は渡辺助手を振り返り、眉を上げた。
太陽を映す黒い瞳は物憂げで、昨夜のバーでの様子とは別人のようだった。
渡辺助手は少し沈黙して「...何でもない」と答えた。
「ええ、彼がまだ陽城市にいることは内緒にしておいてね」白川華怜はある方向を見つめながら、渡辺助手に別れを告げた。「急用ができたから、病院には後で行くわ」
元々は渡辺助手と一緒に病院に行く予定だったが、金子館長から急な呼び出しがあったのだ。
「分かりました」渡辺助手は彼女が向かう方向を目で追った。
タピオカ店の前に一人の男が立っていた。少し俯いていて顔は見えなかったが、身に纏う冷たい雰囲気は明らかだった。視線を感じたのか、彼は静かに顔を上げ、こちらを一瞥した。
通りを挟んでの一目。
真上には強い日差しがあったのに、渡辺助手は思わず身震いした。
あの人は誰だろう?
渡辺助手は腕をさすりながら、再び顔を上げた時には、白川華怜と彼はすでにタピオカ店の中に入っていた。
渡辺助手は携帯を取り出し、渡辺文寺に報告した:【白川さんは江渡大学を目指しているそうです】
渡辺文寺:【?】
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タピオカ店にて。
木村浩も白川華怜に試験の出来を尋ねていた。
数学と物理は二人とも話題にせず、化学と生物だけを議論した。
「問題は簡単だったわ。生物はほぼできたと思う」白川華怜は物憂げに寄りかかりながら、列に並ぶ木村浩に慣れた様子で指示した。「山田にも一杯買っておいて」
彼らはこの後、まず山田に会いに行き、それから書道協会に向かう予定だった。
昨日の朝は白川華怜が試験だったため、木村浩は面会時間を今日の昼に変更していた。
この時間帯はケーキを買う人が多かった。
バックヤードで。
新鮮なケーキを大量に持って出てきた遠山貴雲は、群衆の中で際立つ木村浩を一目見て、足を踏み外しそうになった。
「遠山さん」タピオカ店の店員が慌てて彼を支え、「大丈夫ですか?」