114 田中局長の来訪(2/2)_2

渡辺泉の病室。

ランスの解毒剤は明日にならないと陽城市に届かず、彼は今も酸素吸入を続けていた。

「CNの神経毒だと言うんですか?」警察官は渡辺助手を見て、やや躊躇いがちに尋ねた。「確かですか?」

渡辺助手は頷いた。「これは全て中田先生が検査で確認したことです。記録も残っています」

警察官は頷き、それを記録に書き留めた後、安藤蘭を見つめた。「安藤さん、もし国外が関係している場合、捜査は非常に困難になります」

「なぜですか?」安藤蘭は警察官を見つめ、胸が大きく上下した。「渡辺さんは毒を盛られ、今も生死の境をさまよっているのに...」

警察官は被害者家族の感情を理解しつつ、メモ帳を手に取った。「我々には権限が十分ではありません。結局は未解決のまま終わる可能性が高いです」

彼は安藤蘭に正直に話した。

陽城市は国境に近く、このような事件は多すぎた。

二人の警察官は、水が深すぎて普通の人では手が出せないと言わんばかりだった。

「できる限りの努力はします」もう一人の警察官が安藤蘭を慰めた。

しかし二人の目を見れば。

安藤蘭にはそれが建前だとわかっていた。「権限がないなら、権限のある人を探せばいいでしょう!」

彼女がさらに何か言おうとしたとき、渡辺助手に止められ、彼は安藤蘭に首を振った。

渡辺助手は二人の警察官を見送った。

そして中村修に電話をかけた。彼らの知人の中で、陽城市で影響力を持っているのは中村修だけだった。

「渡辺社長は江渡に戻られたんですか?」中村修は渡辺助手からの偽の情報を受け取っていた。

渡辺助手は白川華怜の意向に従い、さりげなく話題を変えた。「はい、それで今、陽城市の警察は国外に対して制限がないのでしょうか?」

これを聞いて、中村修は真剣な表情になった。「方法がないわけではありませんが...」

渡辺助手は一瞬驚いた。「お聞かせください」

「渡辺さん、お分かりにならないのですか?」中村修は直接は言わなかった。

しかし渡辺助手は理解した。「ありがとうございます」

安藤蘭は渡辺泉のベッドの前に座り、少し首を傾げた。「中村さんは何を言いたかったの?誰か渡辺さんの件を扱える人がいるの?誰?」

渡辺助手は少し黙った後:「ご存知のはずです。田中さんです」

田中さん?

安藤蘭は呆然と顔を上げた。