小林翔琉の助手が後から来たとき、机の上に置かれたままの薬を見て、白川華怜を睨みつけた。
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次のシーンは白鳥春姫と小林翔琉の対決シーンだった。
白鳥春姫は馬上で小林翔琉と戦わなければならない。小林翔琉は乗馬ができないため、低めの模造馬に座り、長槍を持って白鳥春姫と対決シーンを演じる。
武術指導が横で小林翔琉に指示を出すが、小林翔琉の武術は白鳥春姫との差が大きすぎた。
「白鳥春姫、お前は槍で私を殺すつもりか?」途中で止まった小林翔琉は、顔を曇らせて冷たく言った。「槍を振り回すのを止めてくれないか?目が痛くなる。」
周りの人々は何も言えなかった。
武術指導も黙っていた。
目の利く人なら誰でも、問題は小林翔琉にあることがわかっていた。
この小林翔琉は現在人気の流行スター俳優で、国内最大の芸能事務所スターライト所属のタレントだ。演技力は平凡で、民安秋山はスターライトの面子を立てて例外的に彼を起用した。
演技力をあまり必要としない第五男性主役を演じており、最近入ったばかりだった。
このような人気があって気が強く、面倒な流行スターは、よく問題を起こす。
民安秋山は小林翔琉に何も言えず、白鳥春姫の方を見て、「白鳥春姫、表情をもう少し良くして。291シーン5テイク目——」
白川華怜は横に立ち、白鳥春姫のセリフと立ち回りを全て覚えていた。対する小林翔琉はセリフを忘れるか、表情が固まるか、動きが止まるかのどれかだった。
「気をつけて——」
5テイク目で、小林翔琉の槍が馬の目を突きそうになり、馬は驚いて前脚を高く上げた!
武術指導は近くにいたため、急いで手綱を掴もうとした。
しかし、淡い青い影が彼より早かった。
武術指導と監督は呆然と、カメラの前で青い衣装に黒髪の少女が手綱を掴み、白い指で馬の背を優しく叩くと、驚いた白馬が突然静かになるのを見ていた。
彼女は眉を下げ、手綱を掴んだ瞬間、その姿は怠惰でありながら、言い表せない緊張感を漂わせていた。
「白鳥春姫、お前は本当に乗馬ができるのか!」小林翔琉は顔を曇らせた。彼は美しい容姿の持ち主だが、この時は恥ずかしさと怒りで、白鳥春姫の乗馬の技術を非難した。
大手事務所を後ろ盾に持ち、人気者でもあるため、撮影現場で彼に何か言える人はいなかった。
民安秋山も顔を曇らせていた。