「一卓だけよ」渡辺泉は彼女を一瞥した。
一卓だけ?
こんなに少ないの?
渡辺瑞恵は少し意外に思った。
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安藤宗次たちが向かったのは田中家の私設博物館で、午後2時の入館予約をしていた。
渡辺文寺は近くの駐車場に車を停め、一行を博物館へと案内した。
博物館は興和区の最西端、司門区との境界にあった。
博物館全体は庭園風で、正門は広々とした門楼で、毎日入場制限があり、この時間の予約待ちの人は多くなかった。
田中家の私設博物館は広大で、誰もが知っているように、ここには主に白川家の遺品が保管されており、一般公開は無料だが、一日の入場者数は千人余りに制限されていた。
渡辺文寺たちは列に並んで入場し、広大な敷地を持つ博物館の廊下を進むと、中央の第一展示室が見えてきた。
最初に目に入るのは、中央のガラスケースに保管されている甲冑だった。