137 白衣、閻魔に会う(2更)

「木村くん?」

渡辺泉は思い出した。前回安藤宗次たちと釣りに行った時の人だ。「おじさん、知り合いの方がいらっしゃったんですか?どちらにいらっしゃいますか?渡辺助手に迎えに行かせましょう」

「いや、構わない」安藤秀秋は手を振った。「私が翼芽を迎えに行く。道は分かっているから」

水島亜美がついて行った。「一緒に行きましょう」

二人は食堂を出て行った。

大野会長は驚いて安藤宗次を見た。安藤家には江渡に知り合いがいたのか?

とはいえ、今日は渡辺泉が安藤宗次たちを渡辺家に案内しているのだから、この時に「知り合い」を招くのも不思議ではない。大野会長のような商売人は、つい深読みしてしまう。

「では渡辺社長、ご家族でお忙しいでしょうから、私は仕事の引き継ぎに戻らせていただきます」大野会長は丁寧に別れを告げた。安藤家の人だろうが知り合いだろうが、大野会長には関係ない。