137 白衣、閻魔に会う(2更)

「木村くん?」

渡辺泉は思い出した。前回安藤宗次たちと釣りに行った時の人だ。「おじさん、知り合いの方がいらっしゃったんですか?どちらにいらっしゃいますか?渡辺助手に迎えに行かせましょう」

「いや、構わない」安藤秀秋は手を振った。「私が翼芽を迎えに行く。道は分かっているから」

水島亜美がついて行った。「一緒に行きましょう」

二人は食堂を出て行った。

大野会長は驚いて安藤宗次を見た。安藤家には江渡に知り合いがいたのか?

とはいえ、今日は渡辺泉が安藤宗次たちを渡辺家に案内しているのだから、この時に「知り合い」を招くのも不思議ではない。大野会長のような商売人は、つい深読みしてしまう。

「では渡辺社長、ご家族でお忙しいでしょうから、私は仕事の引き継ぎに戻らせていただきます」大野会長は丁寧に別れを告げた。安藤家の人だろうが知り合いだろうが、大野会長には関係ない。

人が去った後、渡辺泉は安藤宗次の方を向いた。「安藤おじさん、午後は文寺が案内します」

渡辺文寺が前もって安藤宗次たちのために予約した博物館は今日の午後の入館だった。

渡辺泉は渡辺文寺に案内を任せようとした。

「いや、結構です」安藤宗次は手を振った。「私たちだけで行きます」

渡辺泉は少し眉をひそめた。今日一日、安藤家の人々の渡辺文寺に対する態度が少し冷たいような気がした。

彼は安藤宗次を先に行かせ、自分は二歩後ろに下がって、携帯を取り出して渡辺文寺にメッセージを送った。

この件について尋ねた。

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江渡大学。

寮の玄関を出たところで車のキーを持っていた渡辺文寺は渡辺泉からのメッセージを見た。彼は表情を引き締めて—

【すぐに戻ります。安藤先生たちによく説明しておいてください】

そう言って、彼は自分の車を見つけて渡辺家に向かって走り出した。

途中で斉藤笹美から電話がかかってきた。

「文寺」斉藤笹美は甘えた声で話し始めた。「うちに迎えに来てよ。パパが木場院長の講演会のチケットを渡すように言ってるの」

木場院長の今回の講演会は、大学生がチケットを手に入れるのは非常に難しかった。

ほとんど大学院生以上で、渡辺文寺も大学の申し込みに参加したが、手に入れることができなかった。