146 田中北実、白川明知からの電話

渡辺千月は人混みの後ろに立ち、小さな声で話していた。安藤蘭との関係が良好だったからこそ、少し話しかける勇気があった。

周りは騒がしかったが、安藤蘭は聞くべきことはすべて聞き取っていた。

「彼女はあなたと同じクラス?」安藤蘭は白川華怜が江渡に観光に来ただけだと思っていた。少し間を置いて「……数学を彼女に教わっているの?」

白川華怜の高校一年生の時の出来事を安藤蘭は忘れられなかった。

安藤蘭の声は少し大きく、いつもの優しさはなかった。渡辺千月は恐る恐る彼女を見て、「はい、彼女は博源塾にいます」と答えた。

「博源塾?」中年の女性は驚いて白川華怜を見つめた。

表情には驚きが浮かんでいた。成績がすべてではないとはいえ、それは人の能力の上限を決める一つの要因だ。博源塾出身者に凡人はいない、確かな潜在能力がある……この渡辺お婆さんは、どうしてこんな人材を門前払いにしたのだろう?