140渡辺文寺のチャンス、白川華怜は藤野院長と約束する_2

その時。

食事を終えて教室に戻る途中の空沢康利は思わずくしゃみをした。彼は畑野景明に説明した。「母が私のことを思い出したんだ」

このような話に畑野景明は返事をしないのが常だった。

「あの、あの……」階段を上がったところで、分厚い眼鏡をかけた渡辺千月が俯いて、小声で空沢康利たちに話しかけた。「白川さんはどこに行きましたか?」

彼女は指を絡ませていた。

声が小さくて、空沢康利は完全には聞き取れなかったが、白川華怜の居場所を尋ねていることは分かった。

空沢康利は彼女を見て言った。「用事があって出かけたよ。何か伝言があれば伝えておくけど」

「いいえ、結構です。ありがとうございます!」渡辺千月は再び一礼すると、そのまま黙々と立ち去った。

空沢康利は首を傾げた。

何か言おうとした時。

携帯が一度鳴り、同時に畑野景明の携帯も光った。

木村浩からで、科学館の位置情報だけだった。

二人は目を合わせ、すぐに向かうことにした。

木村先生は二人に早く来いと言っているのだ。

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科学館は広大な敷地を占めていた。

全体が凹字型の流線形で、上空から見ると、科学館全体が半環状の青い水晶のように輝いていた。

白川華怜と木村浩が先に到着し、二人は先に展示を見て回ることにした。

時間になったら講堂に向かう予定だ。

一階は近現代から現在までの科学技術の変遷を展示し、3Dプロジェクションで知能と共創を示していた。二階は物理、化学、数学の変遷、三階は宇宙と航空で、白川華怜は小型衛星も見かけた。

地下二階。

入口には大勢の人が集まっていた。

ほとんどが江渡大学の人々で、治安のため入場券は限られており、チケットを持っていない多くの人々は入口で見守るしかなかった。

もしかしたら各分野の大家に出会えるかもしれない。

科学館もこのような状況を予測し、地下二階に十数人の警備員を配置して、秩序を維持していた。

講演は二時からだった。

渡辺文寺は入場券を手に入れるとすぐに席を確保しに来た。

彼が入場券を警備員に渡すと、担当者はこの青いチケットを見て、彼を一瞥した。

まだ一時だったが、講堂内にはわずかな席しか残っていなかった。渡辺文寺は本を抱えて、隅の席を見つけて座り、問題を解き始めた。

「大学院受験の準備かな?」頭上から声が聞こえた。