153 藤野院長、藤野悟志の外付け友達(2更)

白川華怜の声が聞こえた。

囲碁が分からず、椅子に座って眠くなっていた木村翼は急に目が覚めた。彼は飛び降りて、ドアを開けようとした。

しかし田中局長の方が早かった。彼は箸を持って出てきて、庭の門まで歩いて、大門を開けた。「白川さん。」

そう言うと、白川華怜の手にある銀色の大きなケースが目に入った。

田中局長は手を伸ばして受け取ろうとした。

白川華怜は手を振って渡さず、横を向いて「着きました」と言った。

田中局長はそこで初めて、白川華怜の隣にいる老人に気付いた。田中家は芸術とは縁遠く、田中当主は泥棒を斬り、田中北実は狙撃を担当し、田中局長も軍隊出身だった……

江渡は大きな街で、藤野院長だと分からなかったが、どこかで見た顔だと思った。

江渡大学や江渡防衛大学の学長なら田中局長は確実に知っていただろう。