「ありがとう。結構です。この後、釣りに行くので」安藤宗次は中村家での食事を断り、丁寧に言った。「皆さんも行きませんか?」
社交辞令なんて誰でも言える。
中村優香は作り笑いを浮かべて、「私は宿題があるので」と言った。
「それは残念だ。私も用事があるので」中村修は特に残念そうな口調で言った。
彼は藤野会長に会いに行かなければならなかった。藤野家の件がなくても、中村修は安藤宗次と一緒に釣りには行かないだろう。渡辺泉がいれば、彼らと少し釣りをするかもしれないが。
彼は丁寧に安藤宗次を玄関まで見送った。
今は藤野家の件が最優先だ。
家に戻ると、中村修は「暇がない」はずの中村優香を連れて藤野信幸に会いに邸宅へ向かった。
藤野信幸は朝から書道の練習をしており、藤野助手が中村修と一緒に座って待っていた。一時間待って、やっと藤野信幸が降りてきた。