154 驚愕の藤野悟志、東区が燃え上がる

陽城市は寒くなく、田中局長は両腕の袖をまくり上げていた。

とても庶民的な様子だった。

畑野景明と空沢康利は田中局長に敬意を表し、中に入って彼の魚を褒めた。

藤野悟志だけが階段の前に立ち止まり、田中局長の隣に座っている老人を見つめ、非常に躊躇し、まるで現実離れした様子で、中に入る勇気が出なかった。

「この学生さん」水島亜美は藤野悟志が手に袋を持ち、もう片方の手にはカバンを持っているのを見て、微笑んで言った。「入らないの?」

「あ……」藤野悟志は我に返った。

彼は家族のその長老に会ったことはなかったが、父も祖父も食卓でいつもその長老の話をし、藤野家の誇りだと言っていた。

家族の若い世代は皆、江渡音楽学院の公式写真を見たことがあった。

藤野悟志は顔を見分けられないわけではなかったが、公式写真の厳格な学者の顔と——