白川華怜はヘッドフォンをつけて少し聞いてから、「とてもいいわね」と言った。
宮山小町は、この一節を弾くためだけに藤野院長から習ったのだった。彼女には技巧はないが、感情だけで弾いていた。しかし、お箏は技巧も感情も大切で、初心者にとって、宮山小町は感情表現が的確で、熟練度も非常に高かった。
もちろん、後ろにいた畑野景明は白川華怜を横目で見た。
もし彼や空沢康利だったら、白川華怜はきっと「ふん」と一言で済ませただろう。
「本当?」宮山小町は白川華怜に自分の感想を話した。「白井沙耶香の演奏はとても素晴らしいけど、彼女の『賭け飲み』は柔らかすぎるわ……」
だから彼女は突然思いついて藤野院長に習うことにしたのだ。
あの戦場の雰囲気は、実際に経験した人でなければ表現できないものだった。