江渡で、渡辺泉は事務机に戻り、資料に目を通していた。
「ホテルからの情報だが」渡辺泉は重々しく言った。「単なる提携先だと思っていたが、ホテルは客の情報を開示していない。この二日間、誰かが執拗に調査を続けていて、もうすぐあなたたちの情報が漏れるかもしれない」
渡辺泉の結婚披露宴の件で、渡辺奥様と斉藤家の人々は必ずホテルに情報を探りに行くだろう。
渡辺助手までもが、あからさまに暗に示唆されていた。
これらはすべて渡辺泉の掌握内にあったが、この一勢力だけは手の打ちようがなかった。
渡辺泉も不思議に思った。白川華怜のことを調べるなら理解できるが、なぜ安藤宗次のことを調べる者がいるのか?
そして……
渡辺家には手掛かりが全くなかった。
「まあ、加藤家の者ではないでしょう」白川華怜はペンを回しながら、少し考え込んだ。