木村浩は顔を上げ、薄い瞳には相変わらずの冷たさが宿っていた。明石真治はそれ以上覗き込む勇気がなく、手が震え、慌てて視線を外し、ハンドルに手を置いた。
急いでアクセルを踏んだ。
後部座席で、木村浩はライトを一つ消し、木村翼の睡眠用に一つだけ残した。手を伸ばしてボタンを一つ外した。
仕切り板の上の携帯電話を手に取り、番号を押した。
「若様」電話の向こうから、やや年配の声が非常に恭しく響いた。「随分とMTR研究所に来ていらっしゃいませんが、あちらの教授がお尋ねでした。」
「行かない」木村浩はリラックスした姿勢で後ろに寄りかかり、一つのライトが彼の右側に斜めに落ちて、顔の大半が影に隠れていた。声は怠惰そうだった。
「お体の生態指標が...」
木村浩は遮った。「薬を飲んでいる」
「お薬を?」向こう側が驚いた様子。