164 採血、"お利口"な華怜（その1）

渡辺颯がまだ反応する前に、彼の隣で明石真治は手元のものを置き、外へ向かって歩き出した。

これは……

木村浩たちが戻ってきたのか？

渡辺颯は姿勢を正し、江渡の小グループLINEの頻繁なメッセージを無視して、玄関の外を食い入るように見つめ、一体どんな女性がこの妖艶な男を射止めたのか確かめようとした。

これは嘘ではない。

両親の関係で、彼は木村浩と幼い頃から知り合いだった。木村浩は家族に事件が起きてから、一時期冷たく人情味のない人間になってしまい、幼なじみの関係であっても、渡辺颯は木村浩の信頼を得るのに長い時間がかかった。

彼らのような家系は、生まれつき疑り深い。

玄関の外で、二つの人影が前後して中に入ってきた。前を歩いているのは女の子で、背が高くすらりとしており、白い少し古風なパーカーを着て、髪は純粋な黒色で、二本のシンプルな簪で全て結い上げられ、肌は白く、慵懶で優雅だった。

彼女は携帯を手に持ち、だらしなく画面をスクロールしていた。

木村浩は駐車のため彼女の後ろに遅れて付いてきており、片手に黒いバッグを無造作に持ち、もう片手に車のキーを持っていた。

入り口を通ると、彼はキーを適当にカウンターに置いた。

渡辺颯は我に返り、立ち上がって、少し改まった口調で「木村さん」と呼びかけた。

木村浩は軽く目を上げた。彼は元々冷たい雰囲気を持ち、気品の中に少しの傲慢さを漂わせ、その薄い鳳凰のような目は極めて冷淡だった。

そして恐らく誰をも圧倒する頭脳を持っており、江渡のサークルの同世代の若者たちは、彼を見るとまるで猫を見た鼠のようだった。

「ああ」白川華怜に向かって適当に紹介した。「こいつは渡辺颯だ」

白川華怜はようやく顔を上げ、挨拶した。「はじめまして」

彼女は誰もが目を奪われるような顔立ちで、どの角度から見ても玉のように完璧だった。

「はじめまして」彼女のアーモンド形の瞳に見つめられ、どれほど静かで美しい顔立ちであっても、渡辺颯は何故か巨大な猛獣に狙われているような感覚を覚えた。

「木村翼は上にいる」木村浩は白川華怜を連れて上階へ行こうとした。

しかし白川華怜は彼の手からバッグを受け取り、「私一人で行くわ」と言った。

彼女は階段を上がっていき、だらしない様子で、木村浩は階段の入り口に立って彼女を見送った。