イヤホンの向こう側で、江渡。
中年の男が携帯をスピーカーモードにし、渡辺浩平は鳥かごの中の鳥をあやしながら、電話の向こうの報告を聞き終わると、意味深な口調で言った。「残念だな、チャールズさんは、失望することになるだろう」
「失望するのはチャールズさんだけじゃありませんよ」中年の男は電話を切った。
「そうだな」渡辺浩平は微笑んで、「私の敬愛する父は、自分の誕生日パーティーで次期後継者を発表するつもりだ。明日はどんな考えを持っているのかな」
渡辺お爺さんはあと何年生きられるか分からないが、渡辺浩平と渡辺翔平をスキップして、渡辺颯だけを期待している。
中年の男は頭を下げて、「二少爺、息子を呼び戻しましたが…」
「心配するな」渡辺浩平は鳥かごを下ろし、彼に一瞥をくれた。「お前の取り分は確保してある。明日は製品部に移動だ」