渡辺颯と親しい名誉校友は二人だけで、木村浩と木村錦だった。
「そうなんだ」白川華怜は頷いて、右肘を車の窓に何気なく置き、表情は怠そうで、手でスマートフォンを弄んでいた。
オープンカーの風が彼女の髪を揺らしていた。
どうしてこんなにも落ち着いた、何でもないような口調でいられるのだろう?渡辺颯は一瞬彼女を見て、完全に感心した。
もちろん、名誉校友なんて...
渡辺颯は知るよしもなかったが、名誉校友どころか、実は白川華怜は江渡大学の全ての名誉校友の大先輩だった。
結局のところ、江渡大学の初代学長は彼女の直系の師匠だったのだから。
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西区の団地。
「もうすぐ大学入試ね」白髪の老婆が島田凜の手を握り、その手の甲には深いしわが刻まれていた。優しい眼差しで続けた。「大学に入ったら、お金が必要になるわ」