彼女は少し躊躇して言った。「上らない方がいいんじゃない?」
木村浩は唇を引き締め、目を伏せた。淡い瞳は常に冷たく、彼女を見つめたまま何も言わなかった。
彼はいつもそんな優雅で人を寄せ付けない様子だった。墨で描いたような眉目は今、非難の色を帯びていた。白川華怜は一瞬躊躇してから、「まあいいわ、上りたければ上がればいいわ」と言った。
陽城市の城壁は長く、階段は数え切れないほどあった。
端まで歩くのに二時間もかかる。
しかし、白川華怜にとってはそれは平地を歩くようなもので、息を切らすことなく八百回も走れるほどだった。
階段を少し上がった後、白川華怜は木村浩の様子を気にかけた。歩みが少し遅くなった以外は呼吸もほとんど変わっていないのを見て安心し、それでも彼女は歩調を緩め、彼と話しながら中央へと向かっていった。