222謎のバー、藤野院長を華怜に会わせる_3

中で誰かがリフォーム工事をしていて、彼女が出てきたのを見たのか、中の作業員が「ドンドン」と壁を壊し始めた。

家にいる時は音が聞こえなかったのに、一歩外に出ると上下階で工事が始まった。

白川華怜は階段口に向かい、二軒の家を見つめた。

彼女はななにメッセージを送りながら、マンションの入り口へ向かった。ここは交通の便が良く、バス停にも着かないうちに、銀色の車が彼女の横に停まった。

運転席には渡辺文寺がいて、冷たい表情で「乗れ。どこに行く?」と言った。

「あなたはどこへ?」白川華怜は答える代わりに尋ねた。

「会社だ」

それなら道が同じだ。雲翔区だから。白川華怜は後部座席のドアを開け、「渡辺家のビルの前まで」と言った。

「雲翔区で何をするんだ?」この時間は渋滞もなく、渡辺文寺は車を大通りに出しながらバックミラーを見た。

「人に会いに」白川華怜は窓を下ろし、腕を窓枠に乗せた。

携帯を見下ろすと。

藤野院長からのメッセージだった——

【一体どこにいるの?】

白川博:【図書館で、一生懸命勉強中】

白川華怜は落ち着いて、平然とキーボードを打った。

藤野院長は白川華怜が勉強熱心で、江渡大学にまで合格したことを知っていた。彼は白川華怜の返信を見て、特に何も言わなかった——

【私が送った編曲を見るのを忘れないでね】

白川博:【1】

**

すぐに渡辺家のビル前に到着した。

ビルの前には数人が立っていた。

一目見て渡辺お婆さんと斉藤笹美、それに渡辺執事と安藤蘭だとわかった。渡辺文寺はハンドルに指を置いたまま、車を降りず、ただ白川華怜に何かあったら電話するように言い含めた。

渡辺お婆さんの方では、斉藤笹美は渡辺文寺が車から降りないのを見て、少し頭を下げ、「渡辺お婆さん、柳井さんにはまだ予定がありますので、お邪魔はしません」と言った。

彼女は安藤蘭を見やったが、挨拶はしなかった。

真っ赤なスポーツカーに乗り込んだ。

スポーツカーが去った後、渡辺文寺はようやくエンジンを切り、白川華怜と共に車を降りた。

「柳井さん?」渡辺お婆さんは慌ただしく白川華怜にちょっと頷いただけで、すぐに渡辺執事に尋ねるように聞いた。