「富山のクラスは量子分野の世界最高峰の一つで、江渡大学の三巨頭の一つだよ」と田中宏司は向かい側の渡辺文寺に確認を求めながら言った。「特に入るのが難しくて、とにかく僕たちは特別クラスの学生を誰も知らないよね?」
田中宏司の言う通り、これらのクラスの学生は江渡大学の最高峰の人材だった。
渡辺文寺はここまで聞いて、何かを思い出したのか、黙り込んでしまった。
「どうして黙っているの?」田中宏司は渡辺文寺が今回自分に返事をしないことを不思議に思った。
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第三食堂の入り口。
黒い車が停まった。
江渡大学に入れる車は数少なく、この時間帯の第三食堂の入り口は人が多くなかったが、それでも何人かがこちらを見ていた。
石川雄也が後部座席から降りてきた。深灰色のジャケットを着て、食堂の入り口に歩み寄り、食堂内を見渡した。