これは新入生が交流を深める良い機会でもあった。
「彼の成績はなかなか良さそうだね」須藤がそう言った時、安藤秀秋が両手に食材を持って戻ってきて、トランクを開けた。
すぐに安藤秀秋の家に到着した。
水島亜美はエプロンを着けて、ドアを開けた。「華怜たちがもうすぐ来るわ。彼女の荷物を出してちょうだい」
「分かってる」安藤秀秋は食材を置いて上着を脱ぎ、今日は明らかに機嫌が良さそうだった。「谷部部長も一緒に食事していきませんか?姪っ子が来るんですが」
彼は谷部部長とは仲が良かった。
谷部部長は彼に多くのことを教えてくれた。二人は研究分野も趣味も異なるが、性格は似ていた。
安藤秀秋が江渡で知り合った数少ない友人の一人だった。
「また機会があればね。家族だけでゆっくり食事してください」谷部部長は安藤秀秋が箱を取り出すのを見て、視線を戻した。
彼は安藤秀秋の家族が以前は陽城市に住んでいたことを知っていた。安藤秀秋はまだ良かったが、水島亜美は江渡に来たばかりの時は何も分からなかった。
安藤秀秋はテーブルを片付けながら、須藤に尋ねた。「君は?」
須藤は白川華怜に会ったことがあった。
彼は首を振った。「谷部部長を送っていきます」
安藤秀秋はそれ以上引き止めなかった。
須藤と谷部部長が去り、車が団地を出て、道を一本通り過ぎたところで、向かいから黒い車が走ってくるのが見えた。
須藤はその車を見て、「あれは……」
「あの家族の車に似てますね?」助手席の谷部部長は窓を下げ、後ろを振り返って驚きを隠せない様子だった。彼らもかつては江渡の上流社会に属していたため、一般の人々よりも見識が広かった。
「確かに」須藤は眉をしかめた。「これは平安区と興和区でしか見ないはずですが……興和区で何か起きているんでしょうか?」
谷部部長は頷いた。彼も何かを感じ取っていた。「分かりませんが……」
何となく賑やかになってきた気がした。
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安藤秀秋の家でドアを叩いたのは木村翼だった。
彼は背が低く、水島亜美はドアを開けるなり彼を抱き上げ、頬をつまんだ。「翼芽ちゃん、ちゃんと食べてないの?背も伸びてないし、お肉もついてないわね」
木村翼は唇を引き締め、水島亜美に挨拶をしなかった。