しかし高橋唯は、目の前にいる人物のような気品は他に見られないと感じていた。
彼女がそう考えていると、白川華怜の後ろから、木村浩が二冊の本を持って彼女の後に続いて入ってきた。彼は柔らかい生地の部屋着を着ており、少し俯いた表情は相変わらず霜のように冷たかった。
「おばさん」木村浩が顔を上げ、珍しく自ら挨拶をした。
彼は二冊の本をテーブルに置き、身に纏っていた人を寄せ付けない冷たさが消えた。
高橋唯は我に返り、何気なく木村浩を一瞥した後、視線を白川華怜に向けた。白川華怜の手を取ろうとしたが、渡辺颯に手を引かれ、渡辺颯は無表情で彼女に慎みを求めた。
高橋唯は渡辺颯を横目で見て、仕方なく白川華怜に挨拶をすることにした。「華怜ちゃんね」
「こんにちは、おばさま」白川華怜は顔を上げ、素直に挨拶をした。